げんこつで殴るよりも、人を傷つける言葉がある。


剣を使わなくても、とげとげしい言葉で相手の胸を刺すことがある。


「言葉の一撃は槍の一撃よりももっと鋭い」というフランスのことわざがある。
スウェーデンの女流作家ブレーメンは、著書『家庭』の中で言っている。
「神は言葉が持つ破壊的な力から私たちを守ってくださる! 鋭い刃物よりも胸を深く切り裂く言葉がある。一生胸に突き刺さったまま忘れられない言葉がある」


分別をわきまえ、抑えることを知っている人は、他人の感情を犠牲にしてまで侮辱的で情け容赦ない言葉を口にしようとしない。ところが鈍感な人間は、歯に衣着せずに思ったことをずばりと言い、たとえ冗談にもせよ、友人を傷つけてしまうのだ。


我慢する気持ちと自制心が欠けているために、後先を考えずにむちゃなものの言い方をする人がいる。
それが、いつかは自分の身に跳ね返って命取りになる。


「向上心 サミュエル・スマイルズ著」より抜粋