『家人過あらば宜しく暴怒すべからず、宜しく軽棄すべからず。
この事言い難ければ、他事を借りて隠に之を諷せよ。
今日悟らざれば、来日を俟って、再び之を警めよ。
春風の凍れるを解くが如く、和気の氷を消すが如かれ。
わずかにこれ家庭的の型範なり。』


家族の者があやまちを犯したとき、声を荒らげて叱ってはならないが、かといって、軽視して放っておくのもよくない。もし直接言いにくければ、他のことにかこつけてそれとなく諭すがよい。
もし遠回しに諭しても効果がなければ、日をおいて別の機会に言い聞かれるというふうに、あたかも春風が凍てつく大地を解かすように、暖気が氷を解かすように、自然におだやかに諭さなければならない。
これが、家庭円満の秘訣である。


「菜根譚  著者 釈宗演  訳 齋藤孝」より