『天理の路上ははなはだ寛し、稍や心を遊ばせば、
胸中すなわち広大宏朗なるを覚ゆ。
人欲の路上ははなはだ窄し、わずかに跡を寄すれば、
眼前倶にこれ荊棘泥塗なり。』

真理の道はゆったりとしてとても広いので、ほんのちょっとでもこの道に心を寄せたなら、たちまち広々とほがらかな気持ちになる。
私利私欲の道はとても狭く窮屈で、欲望にかられてこの道に迷い込んだが最後、目の前はどこもかしこもいばらやぬかるみで、足をとられて進退きわまるという苦境におちいる。

「菜根譚  著者 釈宗演  訳 齋藤孝」より