海の中に棲む魚は、海の本体がどんなものかわからない。だから、海というものを見たいといつも思っています。

この魚がそう希望していると、神様というのは限りないやさしさをもっていますから、魚の望みを叶えるために海を見せてあげようとします。

つまり、人間に釣り上げられるのです。

釣り上げられた魚は海を見下ろして「あー、海ってこういうものなのか。海は広くて大きくて、水平線があって、白い雲があってヨットが浮かんでいて素敵なものなんだなー」と思います。

たしかに“海が見たい”という望みは叶いました。