第二話「進むべき道」

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試合が終わって、ケータイを見ると大雅から手術が終わったと連絡が来ていた。
「北村さん、杏梨の手術終わったって。声が出るかはまだわからないらしいけど。」
「そっか。良かったね。」北村さんの声はいつもより明らかに落胆していた。
「気にしなくていいよ。誰にでもミスはあるから。」
「でも…最後の大会だったし、沢田くんは勝ったのに。私が勝ってればチームでも勝てた…ごめんね。」
「俺、今日試合してて、まだやめたくないなって思った。だから、大学に行っても剣道は続けようと思う。」
「うん。沢田くんならもっと上手くなるんだろうな。学部はもう決めたの?」
「まだだけど。」
「多分、剣道と一緒だと思うんだよね。沢田くんはなんでも出来るけど、その中でも得意なことと苦手なことがあるでしょ?その得意なことを伸ばせばいいんじゃないかな。ってそんなの当たり前のことか。ごめんね。」
「いや、ありがとう。」得意なことを伸ばす…か。

「慎おかえり。試合どうだった?」俺が玄関に入るとエミリーは階段を降りてきた。
「負けた。でも、後悔はない。これからに生かそうと思った。」
「これから?大学でも剣道やるの?」
「うん。今日そう決めた。あと、学部も。」
「え?どこ?」
「理工学部。北村さんが得意なことを伸ばせばいいって言ってて、とりあえず理系だから。エミリーは?」
「じゃあ、私も理工学部にする!!得意だし。」
エミリーと同じ学部を受けることになった。その意味をこの時はまだはっきりとは気付いてなかった。


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第三話「ファイト!!」シーン1へ続く…