亀の甲羅 -3ページ目

亀の甲羅

最近は小説投稿が主。

彼女つくらないとヤンデレが…おっとこれ以上は


                 お嬢様ジェラシー


——————第1章———————
                    隣の秘密



普通、学校や学院では、「お嬢様」と呼ばれるような人はいないと思う。
例えいたとしても、話してみるまで「お嬢様」だとは分からないだろう。

だが俺、武嶋 光牙(たけしま こうが)の学校「鷹夏(たかなつ)高校」では「お嬢様」と呼ばれる人がいるのだ。




———9月某日。教室内にて————

他の学生が来始めたばかりの朝早い時間帯。ちらほら学生が見え始める。


「あーそういえば。聞いたか?今日転校生、来るっぽいよ。俺らのクラスに。」


「何ィ!?まじかそれ!?つーか聞いてねえよ!」

「まあ、今言ったからな…」

「んで?その転校生とやらは男か?女か?」

「女だって聞いたけど。」

「っしゃあ!そうと分かれば早速メアド聞いてアタックするぜ!はっはっは!」

「お前にはプライドってもんがねえのかよ…」


———黒部 勝(くろべ すぐる)
見た目とか口調は多少不良っぽいが、実は意外に優しい所があったりする。しかも外見からは想像出来ないぐらいいいヤツ。


「んなもん、どうだっていいんだよ 。まあでも、男だったら興味ねえけど、女だったらちょっと期待するよな。」

「…何を期待するんだ」

「そりゃおめえ…遅刻遅刻〜って言いながら路地の角で互いにぶつかって、そこから恋に発展する…。くーっ!我ながら素晴らしいシチュエーション!」 

「…ねえな。」

「何でだよ!」

「そんな少女漫画みたいな恋の発展の仕方なんざありえねえよ。」

「なぜに少女漫画?…まさかお前…少女漫画読んだことあるのか…?」

「何でそうなる!?ねえよ!!少女漫画とか読まないから!あくまで例えだ!例え! 言葉の綾ってやつだ!!
…つーか、そもそもお前彼女いんじゃねーの?そんな恋愛妄想語ってたら彼女に振られちまうぞ。」

「チッチッチ。分かってねえな光牙は。」

「なにが」

「理想の恋愛ってのを語るのが男のロマンってやつよ!例え現実が理想の恋愛じゃなくてもな!」

「いや、そんな『ドヤァ』って顔されても…。というか何サラッと『現実が理想の恋愛じゃない』とか言ってんだ。マジで振られても知らねえぞ…」

「あっはっは。心配しなくても大丈夫だって。そんな事は断じてないから。それよりさ、お前もさっさと彼女つくったら?何なら俺が紹介してやろうか?」

「…いや遠慮しとく。」


こいつは毎回こんな感じだ。まあ所謂ムードメーカーというやつか。いつも明るい。多少不良っぽい所もあるが
情に厚く、友達思い。いいヤツだ。
うん。いいヤツだ。


「何でだよ?俺ならお前の好み知ってるから、合いそうなコ見つけて来てやるぞ?」

「いやいいよ…そのうち向こうから話しかけてくるコが見つかるだろうし」

「ンなこと言ってっから出会いもねえんだよ。受け身ばっかじゃ、女は寄ってこねえぞ?男ならガツンと一発勝負!当たって砕けろ!だ。」

「…当たって砕けろ、ねえ…」


するとガラッと扉が開く音が聞こえた
どうやら担任である 深山 丈二 
(みやま じょうじ)が入ってきたようだ。ふと周りを見たらもう既にほとんどの学生が教室にいた。
マジか…もうそんなに時間が経っていたとは…


「よーし全員いるなー?いるなら返事しろよ〜?…やっほーてか?ははは」


この先生、お笑いが大好きで、授業中も何かとオリジナルのギャグを作っては皆を笑わせようとするが、いつもダダ滑りだ。
しかも親父ギャグが多すぎて40代と思われる事があるらしいが実は20代という若さ。正直驚きだ…

黙ってればイケメンなのに…
黙ってれば女子からも人気があるのに

口を開くと周りの人が引くほどらしい。ギャグセンスはからっきしだ。
イケメンなのに。勿体無い。



「あーそうそう。もう知ってるヤツもいると思うが、今日は昭和57年のコメディ映画が来るからな〜。えーっと確か『おれがあいつであいつがおれで』だったか?あははは」


…とまあ こんな風に、俺らじゃ分からないギャグ…というか言い回し?なのかどうか分からんが、通じないような言い方で言ってくるから困りものだ。
ギャグさえなければイケメンなのに。勿体無い(2回目)


「あ、すまんすまん。流石に分からないか。つまり今日は転校生が来るって事だ。分かり辛かったな。すまんね。てへぺろ」


いや分かるわけないだろ。つーかあんた本当に20代かよ…。その映画って
かなり昔の映画だよな…。やっぱ深山先生って40代なんじゃ…。本当に20代なのか?


「いやあ、リメイク版は面白かったよ。いいよねえああいうのは。」


リメイク版かよ。
つか多分誰も知らねえぞ その話。


「おっと、話がズレてしまった。転校生を紹介するんだったな。もう情報はお前達の所に入ってるかもしれんが。……入りなさい。」


おぉ〜!と皆のざわめく声が教室内に響く。まあそれもそうだろう。
誰から見てもはっきりと「美人」だと分かる。もしかしたらアイドルやれるんじゃないかってぐらいの容姿だ。
しかも黒髪ロング。典型的な美人だ。
…俺なら話す事も叶わないだろうけど

その女性が自己紹介をする。


「…初めまして。『柏崎 杏花』
(かしわざき きょうか)です。よろしく」


…何だ?また教室内がざわめき出したぞ?あまりに容姿端麗だからざわついてるのか?でも何かさっきと違うような…?まあいいか。
それにしても柏崎さんの声が小さかったように聞こえたが…。緊張してるのか?そりゃそうか。
まだ右も左も分からない、ゲームでいう初心者だもんな。仕方ないか。


「お、おい聞いたか?柏崎だってよ…。マジかよ…柏崎って、あの柏崎…?」


おや。いつも何事にも動じない黒部が珍しく震えてるな。どうした?
というか今「あの」って言った?
んん?柏崎さんに何か秘密でもあんのか?


すると先生が、皆がざわついてるのを静めるためなのか。


「はいはい。静かにしなさぁい!」


金八先生っぽく言いたかったのだろうが…。下手だ…。やり方が下手だ…
だがそれで皆が静かになったので
結果オーライ…なのか?



「…こ、こほん。お前ら、柏崎とは仲良くするように!高校生にもなって仲間外れにするとか大人気ないからな!」


たまにまともな事言うよなこの先生…

「よし。じゃあ席は……。お、武嶋の隣が空いてるな。じゃあそこで。」


ふむ。俺の隣か………ってはあ!?

一斉に向いた男達の視線が痛い。
待て、そんな目で俺を見るな!
怒りの視線でこっちを見るな!
偶然だ偶然!おい黒部お前も何か…


「何で…何でお前なんかの隣に…がるる…」


あ、だめだこいつ。吠える直前の犬みたいになってやがる。がるるって。
…いやいや、気持ちは分かるがたまたまだ!たまたま!不可抗力だ!


そんな事はお構いなしと言うように俺の隣に座る柏崎さん。
近くで見ると容姿端麗と言われるのが本当に良くわかる。髪も長いし…
よくアイドルのスカウトとかされなかったな、と思うぐらいだ。



「おいおい武嶋。挨拶ぐらいはしとけよ?せっかくそんな可愛いコが隣にいるんだからな!ははは!」


いやいや笑いながら言う事じゃないでしょ!あんたそれでもイチ講師か!
まあ確かに可愛いが……って違う!
挨拶ぐらいはするべきだ!うん!

俺が挨拶しようとした時…


「んじゃ、特に連絡事項もないし、HRはこれにて終了だ。アディオス!」

深山先生が出て行く。
…おい、人が今から挨拶しようって時に…なんつータイミングだよ…

とりあえず挨拶だけでもしとくか…
と思い、俺は柏崎さんに

「よろしく」

とだけ言った。せめて名前は伝えておくべきだったか。と思ったが皆の視線が怖いから名前は言わなかった。

だが俺が よろしく と言った途端に、皆の空気が凍りついたように感じた。
何だ?何で凍りついてんだお前ら?

すると柏崎さんも

「…よろしく」

何ともまあ無愛想な返事だ。
まあ緊張してるだろうし仕方ないか。
つーかお前らいつまで凍りついた空気出してんだ。そんなに俺が憎いか?


「…おい光牙ァ」


すると黒部がいつもより低めの声で…
ってあかん。こいつが低めの声の時はお怒りモードの可能性が高い…
え、なに!?俺なんかした!?


「光牙ァ…てめえ…」

はわわわわ…やばいやばい
これきっとお怒りモードだやばい!


「こ、光牙ァ……お前正気かよ…」


ん?あれ?怒ってない?
つか声震えてる?何で?
…ん?つか正気?何言ってんのこいつ。俺は至って平常だが?
いつも通りだが?


「正気?何言ってんだよ?俺はいつも通りだぞ?」

「……。あー…そうかお前知らないのか…。…まあ知らない方がいいって事もあるしな。うん。」

「??? 何だよ教えろよ。え?何?知らない方がいいって。どゆこと??私気になります!気になりますぅ〜」

「…いやお前そういう態度改めた方がいいと思うわ。本当まじで」


ええええええええええええ!?
どうした⁉︎いつもの黒部じゃない⁉︎
やっぱ隣の柏崎って奴に何か秘密があんのか?んーでも気になるな…
あ、そうだスマホで調べよ。

俺は徐(おもむ)ろにスマホを取り出して検索欄に「柏崎 杏花」と打った。

だが出てきたのは「柏崎 杏花さんの姓名占い〜」とか、一般の人を検索すると出てくるアレだ。

「あ〜…出てこないのか…。…光牙。お前に一言、言うことがある。」

「何だよ」

「ドンマイ(マジな顔)」

「ふぁっ!?」

するとまるで黒部のドンマイが合図だったかのように、さっきまで凍りついていた空気が緩んだ気がする。
いや…それよりも…
黒部のあんなマジな顔初めて見た気がする。あれは何を意味するんだ…

そしてこの柏崎ってのは何なんだ。
何か秘密でもあんのか…?




—第1章—
隣の秘密   END