クラオとモフは寝室にいた。ベッドの上で、二人とも裸だった。肌寒いので毛布をかぶっていた。
「……先に抱いて」モフは顔を赤らめて言った。「血を吸われたあと、元気がなくなってるかもしれないから」
「そうだね」クラオはうなずいた。「明日の朝もバッチリ鉄分とろうね。モフ」
 クラオはモフの裸の胸を触り、揉んだ。弾力があり、固かった。モフは喘いだ。
「前より大きくなったね、モフ?」
「一年も経ってるんだもの」モフは言った。「わたし、もうすぐ十八だよ?」
「これから毎日揉んであげる」クラオはモフの胸を中心の突起に向かって搾るように揉みしだいた。「固くなってるよ。ここ」
 クラオはモフの胸の突起を指でつまみ、くねくねうごかした。モフはたまらず声を出した。クラオはモフの胸に口をつけてなめた。突起の周囲全体を口のなかに入れて吸った。口腔内で固い突起をもてあそんだ。口を離した。唾をつけて濡れた突起を指で挟んでしごいた。
 モフは喘いだ。喘ぐモフの口をクラオの口がふさいだ。モフの口のなかにクラオの舌が入り込んだ。しばらくしてクラオが口を離すと、モフの声が一気に洩れた。
「ずっとずっといじってると、どうなるのかな?」
 モフは言葉にならない声を発して身体をよじった。
「愛してるよ。モフ」
 クラオは言った。クラオはモフの胸の固い突起をいじりつづけた。モフが上半身を反らして逃れようとするようにうごくと、やがて腰から下にビクンビクン震えが起きた。すぐにグッタリした。クラオはモフの胸から手を離すと、モフの顔を両手で挟んでまたキスした。モフは口のなかをクラオの舌になめられるままにしていた。
 クラオは口を離した。毛布のなかでモフの下半身を触った。太ももを撫でると脚をひらかせた。モフの股間に触れた。もう粘液まみれになっていた。濡れている亀裂に指を触れるとモフはビクッとなった。
「すごい濡れてる」クラオはモフの耳元にささやいた。「逝っちゃったからね」
「逝ったのひさしぶり」モフは言った。
「モフの身体触るの一年ぶりだもんな」クラオは言った。「あの頃よりグラマーになったね、モフ」
「最近食べすぎかも」モフは恥ずかしそうに言った。
 クラオはモフの股間に指を這わせた。亀裂を指で押し拡げて豆粒ほどの突起を探し当てると、粘液で濡れた指先を突起にくっつけてこすった。モフは激しく喘いだ。クラオは喘ぐモフの頭を片手で抱きながら口を吸った。そのままモフの股間の豆粒をこすりつづけた。やがてモフはクラオに抱かれながら上体をわななかせ、股間の奥のほうからくる波に下半身を震わしてグッタリした。
 クラオはすぐにモフの口を吸った。口を離すとモフに言った。
「また逝っちゃったね」モフの赤いほっぺたに唇をつけた。「何度も何度も逝かすからね。前みたいに」
「すごい気持ちいい」とモフ。
「僕のこと一年経っても好きだったの?」
 モフは無言でうなずいた。
「僕もモフが好きだったよ」クラオは言った。「モフとまたつながりたかった」
「あなたが気持ちいいことを教えてくれたのよ」
「させちゃいけないけど」クラオはモフを抱きしめた。「モフのこと妊娠させたい」
「わたしを?」モフは潤んだ目をクラオに向けた。「でも、なんで妊娠させちゃいけないの?」モフはそばにあるクラオの目にたずねた。「わたしがまだ学校に通ってるから?」
「吸血鬼の子供が生まれちまう」
 いままで幸福感にみちていたクラオの顔に暗い影が射した。
 モフはクラオの顔を見ると首根っこに抱きついた。
「いいじゃない? 子供が吸血鬼だって」モフはクラオの顔を胸に抱き寄せて言った。「あなたも吸血鬼なんだし」
「……」
 クラオは考えていることがあるらしかったが、なにも言わずにモフの胸の膨らみを掴んだ。小刻みに手をうごかした。モフはまた切ない声を洩らした。
 モフは両脚をひらいてクラオを待ち受けていた。クラオの下半身の器官はすっかり固くなっていた。モフの股間の亀裂を探り当てると、器官はヌルヌルした部分に分け入ってきた。モフは喘いだ。クラオは器官を根元まで入れるとそのままうごかさずにモフの顔を両手で挟んだ。
 モフの上気した赤い顔から血の匂いがしていた。クラオは特殊な嗅覚で皮膚を通して血液の匂いを嗅ぐことができた。その匂いはクラオの頭をクラクラさせた。「ああ……」と低く嘆息した。自分の身体の一部がモフの体内にもぐり込んでいるのを思い出し、クラオはうごきを再開した。
「モフ。可愛いよ」
 クラオはモフの口を吸った。
 ベッドの上でモフが繰り返し身体を震わしてグッタリしたあと、モフは器官同士がつながったままでモフに言った。
「血を吸っていい?」
 モフは目蓋をあけてクラオを見た。モフは黙ってうなずいた。クラオに血を吸わせるためにモフは顔を背けて首筋をさらけ出した。以前、クラオが眠っているモフの首筋から血を吸って絆創膏を貼ったことを教えられていた。
 クラオはモフの首筋に唇をつけた。キスしながら舌の先でそこの肌をなめた。血管を見つけると柔らかい肌にニュッと尖った八重歯を立てた。プツッと肌が傷つき、出血した。クラオは一滴も逃すことなく血を吸い込んだ。傷口を唇でふさいで血を飲んだ。あとからあとから血は噴き出した。
 クラオは吸うのをやめて傷口をなめると、ワセリンを塗った。その上に絆創膏を貼った。クラオはモフの体内から器官を抜いた。
 モフはクラオの身体を引き寄せて背中に腕を回した。クラオはモフの顔を覗き込むと、また口を吸った。
 口を離してクラオはきいた。
「痛くなかった?」
 モフは首を振った。
「逝ったあとだから気持ち良かった」モフは答えた。「なんだか眠いわ」
「寝ていいよ」
 クラオはタオルをとるとモフの股間を拭った。モフはされるがままにしていた。股間のぬめりをとってクラオがモフを見ると、すでに寝息を立てていた。

 モフはクラオの家に頻繁にやってくるようになった。泊まった翌朝、クラオの家から学校へ行くことも多かった。モフはクラオの家で家事をし、クラオとしょっちゅう身体をくっつけ合っていた。
 モフは母親にクラオを紹介した。どうしても会わせたいらしかった。クラオがモフの家から帰ったあとでモフの母親は「八重歯が伸びた人だね」と娘にささやいた。モフはクラオの正体は母親に隠していた。
 モフは定期的にクラオに血を吸わせていた。半月ごとに血を提供した。そのかわりクラオがほかの女を狩猟して血を吸うのをやめさせた。たいていベッドで行為をしたあとに吸血の時が訪れた。クラオはモフの血を吸うと全身に活力がみなぎり、よみがえったようになった。ベッドでは反対にモフが眠りこけていた。クラオは血を吸ったあとのモフの体調を心配した。
 血を吸った翌朝、クラオは鉄分の栄養剤をモフに飲ませた。モフは鉄分をとるといくらか元気をとり戻したように見えた。半年ほどそんな生活をつづけた。
 ある朝、モフは目覚まし時計が鳴っても目を覚まさなかった。クラオが手を伸ばして時計を止めると、モフに呼びかけた。モフはしばらく経って目をあけた。
「おはよう。クラオさん」
 モフは眠そうな声で言った。クラオは身体を起こそうとしないモフを見て「眠り姫はキスされるまで起き上がれないのかな?」と言った。
「キスして」
 モフが言った。クラオはモフにかがみ込んでキスした。しかしモフはまた目蓋を閉じてしまった。
「モフ。起きないの?」
 クラオがきいた。
「……」
 モフは答えなかった。クラオはようやく心配になった。昨夜、恒例の吸血をしたのだ。行為のあとの吸血もいつもと同じだった。変わったことといえば、モフが血を吸っている最中に眠り始めたことだった。
 モフの眠りを妨げるのは悪いので起こさずに傷口に絆創膏を貼り、そのままクラオもモフの隣で寝た。血を飲んだ翌朝はクラオは生気にみちている。ぐっすり眠って体調も良い。反してモフが一向に目を覚まさないのが気がかりだった。
「モフ?」
 クラオはモフに顔を近づけて呼んだ。ややあってモフは目をひらいた。
「平気」モフは言った。「眠いだけ。眠くて起き上がれないわ」
「大丈夫?」クラオはモフの顔を両手で挟んで「貧血じゃない?」
「そうかも」モフは答えた。蚊の鳴くような声だった。「ただの貧血よ」
 ただの貧血のはずがない。クラオが血を吸ったせいにちがいなかった。モフはそのまま眠りつづけた。学校へ行く日だった。今日は行けないだろう。クラオは学校に電話をかけてモフが病欠することを伝えた。モフの兄と名乗ったら、すんなり通じた。
 その日モフはお昼になっても起きなかった。そういえばモフは今朝まだ一度もトイレに立っていなかった。小用をさせるべきだと思い、クラオはモフに呼びかけた。
「モフ。トイレ行きたくない?」
 モフはしばらくして目を閉じたままで「……うん」と返事した。「おしっこしたい」だが起き上がる気配がなかった。
 クラオはモフの背中に腕を回して抱き起こした。裸に肌着だけつけていた。昨夜、行為のあとそのまま寝たからだ。クラオはモフのお尻の下を腕で支え、背中を抱いて抱っこするとトイレへ運んだ。下着をはいていない下半身を便座にのせた。
「モフ。さ、出すんだよ」
 モフは相変わらず目を閉じたまま「うん」と返事した。クラオはモフの裸の下半身の膀胱の上を手で押した。モフはたちまち放尿した。用がすむとモフは「ごめんなさい。面倒かけて」と言った。
 モフはその日、夕方近くなってやっと自力で起き上がった。クラオはいつものように鉄分の栄養剤をモフに飲ませた。
 クラオは絶望的な気分だった。その夜、モフはもう一晩クラオの家に泊まることになった。ベッドに寝ながらクラオは両手を組み合わせた。灯りを消すと、天井を見上げて「……神様」と呟いた。両頬を涙が伝って落ちた。
 明くる朝。モフはクラオより先に目覚めていた。クラオはモフが起きる気配で目蓋をあけた。
「おはよう、クラオさん」
 モフが言った。クラオはモフを見ると、モフの手を掴んだ。
「モフ。お願いがあるんだ」
 モフはけげんそうにクラオを見た。
「なあに?」
「最後のお願いだ」クラオは言った。「僕の心臓に杭を打ち込んでくれ」
「なんですって?」
 モフはおどろいて声を出した。
「このまま僕がモフの血を吸いつづけたら、モフは遠からず死んじまう」クラオは暗い口調で言った。「僕なんか、この世にいないほうがいいんだ。モフ。きみを生かすために僕を殺してよ」
「クラオさん……」
 モフは涙声で言った。
「僕は棺桶に寝るから」クラオはモフを見た。「僕の心臓に杭を打ったら棺桶に蓋をしてくれ。僕の父さんのように僕は……」
「自分だけ死なないでよ」
 モフは不意にするどい口ぶりで言うと、クラオの首根っこにかじりついた。首筋に歯を立てた。傷つくと血が出た。モフは出た血を夢中で吸い込んだ。
 クラオはおどろきに目を見張り、モフを見た。
「わたしもとうとう吸血鬼になったのよ。ほら」モフは口を指で拡げて見せた。八重歯がニュッと伸びていた。「昨日、なかなか起きなかったのは血を吸ってないから弱っていたんだわ」
「モフ……」
「これでわたしたちは一緒よ」モフは血を吸ったあとクラオの首筋に絆創膏を貼った。「時々、お互いに血を飲み合いましょう。それしか生きる方法はないわ」
「モフ」クラオは涙ぐんだ。「ごめん」
「いいのよ」モフは言った。「これでわたし、あなたの赤ちゃんを産めるわ」
 クラオはモフの背中を抱きしめた。モフの後頭部を抱くと、モフの口を吸いとらんばかりにキスした。