仮面執事と銀のギター(今は赤だけど…orz) -7ページ目

ザリガニート

逃げる時は、後ろ向きに。
どうせ俺なんて…」と逃げる。

ハサミが重いから
そう逃げるのが、はやい。

攻める時は、前向きに。
一方的に攻撃を加える。

自分より確実に弱い相手に。

たまに投げ返される言葉に
反論するほどの頭がないから
そんな時は、やっぱり逃げる。

俺は異物。

自分より弱いものしかいない
この川は居心地が良かったが

アメリカ生まれというのが
この辺りに住むニンゲンには
気に食わないらしい。

固有種を守るという名目で
俺の仲間は駆逐される。

そういうニンゲンは
俺と思考回路がよく似ているから
気持ちは理解できる。

だから、俺はわざとつかまるフリをして
ニンゲンの鼻を
思い切り挟んでやった。

絶対的に征服していると思った相手に
反撃されると、焦るものだ。

だがしかし、ニンゲンたちは
げらげら笑って、喜んでいた。
痛がってる男も、心なしか嬉しそうだ。

俺は予想と異なる結果に
顔も身体も、真っ青になってしまった。

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あなたもわたしも

諸説ございます。

歩いてるとよく転ぶから
転倒虫、テントウムシ。

一番高いところにのぼって
そこから天に向かって飛んでいくから
天道虫、テントウムシ。

どちらでもようございます。

ワタクシ、自分で自分のことを
テントウムシと呼ぶことはないので。

前者の方は
頭の悪い輩が考えた駄洒落のようで
クソダセェですし

掃き溜めみたいな世界から逃げたくて
誰もが死に向かって飛ぶのですから

後者の方は、全ての生き物に
当てはまるといえますし

センスの欠片もない
馬鹿みたいなネーミングというのが
テントウムシと呼ばれる本人の
意見でございます。

ワタクシがここまで言えるのも
ニンゲンがいなくなったからです。

村に残っていた老人は死に絶え
子供たちは都会から戻る理由がなく
今では雑草に覆われた
ニンゲンの住処の跡ばかり。

いる時は邪魔で仕方がなかった彼らも
いざいなくなると寂しいもので

悪態をついたところで
何一つ変えられず

ただなまあたたかい風が
吹くばかりなのですが。

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燕の行方

太陽があれば
行くべき方位がわかり

山の稜線や、海岸線で
行くべき場所が分かる。

いき場をなくして
身動きが取れず
ただ一人、石像のように立ち尽くす
あなたを眼下に

あたたかい空気の
あたたかい土地を目指して
ぼくは空を駆ける。

津波で浜が削られても
火事で森が焼け野原になっても
隕石で地面に大穴があいても

地平線の形は変わらない。

あなたはニンゲンであって
ぼくはツバメという宿命も
簡単には変えられない。

春の日差しのなか
ぼくがもしニンゲンだったらと
想像力を働かせてみる。

空からは行けないことろに
行くだろう。

そこには空にはない宝物が
あるかもしれない。

そこには空にはない残酷な罠が
あるかもしれない。

ただ一つ言えるのは
立ち止まることはないということ。

自分ひとりしかいないのに
誰かがいつか助けてくれると
物欲しそうな顔で
ただ黙って立つような真似は
しないだろうということ。

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