まず初めに、自分がこの作家を認知した時には…
小ぶりの美術系月刊誌で、それも古本屋で立ち読みしながら『何かすごい人が世の中にはいるもんだ』などと思いつつ、自分には縁のない方なのだろうとさっさと思考を切り替え、別の古書に手を伸ばし立ち読みの疲労と戦っていたという、あまり良いとは言い難い記憶が蘇ります。
次に見かけたときは現代アートの祭典。『横浜トリエンナーレ』での巨大なオブジェで、その存在感にこの作品は常時はどこに保管しているのか?とか、倉庫に保存しているのだとすると保管料は一体、月幾ら掛かってしまうのだろうか?などと要らぬ心配をするという小市民ぶりを発揮しつつ、多分常に起こっているような怖い性格なのだと勝手に決めつけ記憶の引き出しにしまっていました。
そして今回、大個展巡回という機会に巡り合い、やっぱり観ておきたい衝動が抑えられず、東京展示に行ってきました。(2023年8月時点終了)
まず感想は、作家ご本人様がいらっしゃっていて、丁度ゲリラライブ演奏会を終えて会場の操作室から控え室に戻るその瞬間に目視した時『あ。御本人だ。居たんだ。』というこの一言に尽きますかね。
逆に言うと、もうそれ程までにある種の偶像化が達成されており、知名度とその作品のインパクトがその辺の作家を吹き飛ばす程の威力を持っていると言えるのではないでしょうか。
作品も一つ一つがどれも足を止めてしまう引力を放っていて、それが一個大隊の規模で会場に収まりきらないと思える程展示してあり、創作意欲を掻き立てる展覧会でした。