2011年4月10日に中野サンプラザにて行われた、
伝説的な早見あかり脱退コンサート、
その待望の完全ソフト化であります。
3枚組・5時間半という狂気のボリュームを
インターバル入れつつ一日がかりで鑑賞しました。
俗に「Z新規」と呼ばれるド新参者な私にとって、
ももクロ最大のターニング・ポイントであるこのLIVEを
観ていないことは大き過ぎるコンプレックスであり、
映像というカタチにしろ その全貌をようやく拝めたことは
まことに感無量であります。ようやく、自分の中の
「ももクロ史」の最も大きな欠落が埋まった気分。
なんせ盛り沢山な内容ゆえ、全部語ってるとテキストが
10メートルを超えます。
端的に感じたことを申し上げますと、これを観れば、
ももクロが「ももクロZ」になる過程で失ってしまった、
大きな…あまりにも大きすぎるものと、その結果、得た物…
いや、損失を埋めようとして、後のメンバーが
死力を振り絞って勝ち得たものが、マザマザと分かります。
この夏は「Z」になってからのももクロのLIVEに狂ったように
通い詰め、すっかり馴染んだ5人フォーメーション。
中央にリーダー百田夏菜子を据えた、視覚的にも
極めてスワリの良い並びに、「5人になって確実に
良くなった!」と自分はナットクしてはおりました。
しかし改めて5時間ブッ続けで「あかりんの居たももクロ」を
注視してみますと、明らかに体格的に突出した、
異物感すら漂う「早見あかり」というメンバーが、
ももクロにとってどれほど得難く、大切な存在であったかを、
改めて…本当にイマサラのように痛感させられます。
小柄なメンバーたちの後方に、頭ひとつ抜け出すカタチで控え、
見守っているその姿は、まるで神木のよう。
圧倒的な存在感を隠すようにリーダー百田を引き立て、
重低音のラップでもってももクロの歌声をアダルティに
引き締める早見あかり。それはスパイスのような、文鎮のような、
無くてはならぬ「異物」であったのですね。。。
パフォーマンスだけでなく、そのアネゴ肌な人柄が
メンバーにとってどれほど心の支えであったかは
想像に難くないです。
彼女が抜けてしまった後のメンバーの喪失感、
心細さは如何ばかりであったか。
負けず嫌いな彼女らは
「あかりんが抜けてからパワーダウンしたと思われたくない!」
という意地から超人的な努力を重ね、高密度の試練を次々に
乗り越え、わずか数ヶ月で見違えるような成長を遂げております。
早見あかりが背負い続けていた重荷を全員で振り分けるようにして、
「Z」なる、パワーアップ感の有る名前に恥じないだけの
グレードを会得しております。それが、このたった4ヶ月前の
LIVE映像を観るだけでハッキリ分かります。
このDVDでの彼女らのパフォーマンスが拙いとは申しませぬが、
少なくともこの時点では、秩父宮ラグビー場に集まった
数万人の観客(その7割方は韓流ファン)のドギモを抜いて
場を完全にかっさらうような快挙は難しかったことでしょう。
自分は常々、賢明なる早見あかりは、自分が身を退くことで
メンバーたちがその穴を補完するように努力し急成長を遂げ、
引き締まったフォーメーションによって、ももクロが
数段グレードアップすることを見越していたのではないか?
と想像するのですが、今の「Z」の成果を見るに、あながち
間違っていないように思えます。
それでも… ももクロから早見あかりが抜けて良かったとは、
自分は決して思いたくない。リアルタイムでは拝めなかった彼女の
剛直にして華やかな存在感をモニター越しに偲ぶにつけ、
自分がファンになった頃には失われていた、もう決して
取り戻せないものに思いを馳せ、胸が裂けそうに痛むのであります。
そしてこのDVDは、 「ももクロとは、赤と青の物語である」という
ネットで囁かれる極論を、ある程度ナットクさせるような
内容になっております。
特に『デコまゆ 炎の最終決戦』という、このLIVEの為だけに
作られた怪曲は、赤:百田夏菜子と青:早見あかりが
今回の脱退騒動が元でで大ゲンカするという、超メタな歌詞。
「大体なんで辞めんのよ!今が大事な時じゃん!」という
ダイレクトにも程が有るスゴい歌詞を歌い上げるリーダーの、
尋常ならざる、燃え盛るようなテンションには瞠目させられます。
ここでのリーダー、プロレス的なパフォーマンスを超えて
明らかに本気で怒っております。
ファンの間では伝説的なエピソード…
メンバーの前で早見あかりの脱退が発表された日。
マネージャーの車の中で、リーダーと早見がケンカに近い
テンションで、お互いに言いたいことを言い合ったという
あの時の感情を、そのまんまステージ上で再現しているように
見えるのであります。いや、リーダーのこと。再現というよりも、
歌ってるうちに自然にその時の感情にジャック・インして
しまったのでしょう。
もちろん、ここまでむき出しの感情をぶつけ合えるのも、
何より相手を本気で怒れるのも、余人には想像もつかない
二人の固い信頼関係が有ってのこと。
曲の後半、ももクロらしく豪快なダンス・バトルで
激しくヤリ合った二人は、ビューティ・ペアの
『真っ赤な青春』を模した感動的なメロディでもって
高らかに和解と、この先も続く固い友情を謳い上げます。
まさしく「赤と青の物語」が一曲に凝縮されており、
コミカルな曲調でありながら目頭に自然とアツいものが
込み上げて困ります。自分的には、このDVDの白眉です。
第二部ラストの脱退セレモニーについては…
この先の人生で、ここまで涙を流す経験が有るのか!?
ってぐらいに泣きむせんでしまって、詳細を思い出せぬ
体たらくです。
セレモニーの始まりに先立って、マイクを額に当てたまま俯き、
顔をクシャクシャにして何も言えなくなっていたリーダー。
やがてLIVEの冒頭で自ら宣言した「今日は泣きながら笑います!」
という公約を守るように、全力で笑ってみせるショットが
滂沱の涙を誘います。
全ての感情が顔に出てしまう彼女が、盟友・早見を安心して
送り出すために、必死の思いで笑顔を振り絞ってみせる…
かの名作『さようならドラえもん』で、未来に帰るドラエモンを
安心させるために、自力でジャイアンに立ち向かい、これに
打ち勝ってみせたのび太の姿すら想起しました。
そして、俯いて泣き濡れていたリーダーを、敢えてからかうように
飄々たる態度を装っていた早見が、その一世一代の笑顔を見た途端に
自分のほうが込みあげる感情に呑まれて顔を歪ませてしまうという
まさしく「表情のドラマ」が圧巻でありました。
もちろん、稀代の名曲『あかりんへ贈る歌』に至る、
ももクロを知らない人でも否応なしにかつてない感動の洪水に
巻き込んで押し流す、大圧巻のクライマックスは言うに及ばず。
ここまで高密度の、関係性ドキュメントを拝める機会も、
そうは無いでしょう。つくづくももクロとは、全力とガチの
リアル・パフォーマンスでもって、着実に人心を掴んで
来たのだなあと痛感させられます。
このDVDは、そんなももクロの等身大の魅力が迸り、溢れかえる
「ももクロ・極ナマ真空パック」のような逸品。
アルバム『バトル アンド ロマンス』、
ライヴDVD『ももいろクリスマス』と
併せて鑑賞してみれば、「何故、今ももクロなのか?」
という理由は誰にでも確実にナットクして頂けると信じます。
MUST BUY!!!!!
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