この発言は平成2年
まだまだスマホなどがこんなにも小学生段階から入り込んでいなかった時代の発言なのですが、一番最初の「暗闇」などは、自分の部屋でも街中でもなくなっていますよね。
それは一見文明的な生活であるようで、実は生命力を著しく低下させている大きな原因の一つなのかもしれません。

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(夜を怖がる子どもが明りをつけて安心する、ということに関して)その安心が逆なんだって。家というのは安らぎを得る所だろ。明りをつけたら生命体が安らぎを失うことなんだよ。だから皆あべこべになっているんだよ。感覚的にね。明りをつけて現実空間に戻ってそして安心するなんて『自分』はもぬけのカラになっているんだ。暗闇になった時、初めて自己にかえって生命体が活躍しているんだ。その躍動を止めちゃうってことだね。

 家っていうものは子どもの生命体としての感性が息づいている。

 (子ども)という生命体が生まれ出るところが家なんだよ。その生命体を包んでいるものが家なんだよ。野っ原に生み落とすわけではないんだよ。今度は視力がついた時にその生命体はどんな反応をするのだろうか。奇妙なことだと思うのよ、僕は。顔が見える。家族の顔が見える。皆の顔がのぞき込むんだから。ところがどれ一つとして同じ顔はしていないんだもの。

この生命体は驚くと思うよ。・・・そういう環境の中に生まれているんだよ。同じ自分を包んでくれる人間でありながら、どうして顔がこんなに違うんだろうかと思う筈だと思うんだよ。どうしてって言うのはその理由を求めているわけではないけれども、生命体は生命体の何を勉強していかなくちゃならないかというのは、その生命体を守っているその集団の研究をしていかなくちゃならない筈ですよ。それに名称がついていくわけよ。お父っつあん、おっかさん、じいちゃん、ばぁちゃんっていうのはそうだろ。

 だから現代人は本当にバカになってると思うんだ。この生命体を育てるこの組織があるにもかかわらず極めて薄い薄い層の中で生命体を育てようとしている。その家の組織が人間が生きて行く活力を学んでいく材料なんだものな。

 家具の新旧なんて、実に簡単だったんだって思うんだよ。だって自分をのぞきこむもの自体が人間の古さ・新しさっていうものをバーッと見せてくれるんだもの。直観的に生命体は生命がどんなものであるかが学べるような仕組みをちゃんと持っているんだ。そして古いやつから去っていくんでしょ。

 人間がこの家を忘れたら人間は秩序を失って行きますよ。どんなに生命の尊さを教えようとしたって家が崩れたら生命の尊さを学ぶ理由がなくなってしまう。愛情豊かな家に育ったものほど豊かな人間が育つに決まっているんだから。子どもは絶対に大事に育てなくちゃうそですよ。

 家の問題は生命を包んでいるその環境状況・・・具体的には人間関係であるということだね。だから時間観・空間観を引っ張り出すという事は、同時に人間関係を引っ張り出すことでもあるってことだね。

 人と会う、人と別れる、っていうのはそれは家ということによって代表されている生命体の変動、必ずその生命体に変動をもたらしている問題であることでしょうね。
(平成二年合宿)


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この前から話題にしている「ちゅらさん」などは、まさにこの内容がドラマ化されているようなものです。

確かに「家」に縛られて個人の自由がないがしろにされてきたということはずっと続いていたし、今でも家によってはあると思います。「家をつげ」「この家の者としてふさわしく」等々

でもその反動が行き過ぎて、逆に個々人が精神的な母胎を失って、物質的にはかつての日本人が信じられないくらい恵まれているのにも関わらず、家族の間でも感謝を忘れて不平不満・・・親子でもきょうだいでも互いに自分の自由を妨げる敵どうしのようになっている場合が少なくない。

地域社会がどんどん機能を失いつつある現代社会・・・・自由と身勝手のはきちがえで、問題はすべて他人のせいにして・・・・

人間としての一番最初の「家」の意識がおかしくなっているのですから、当然といえば当然の結果だと思います。

自分達の今この先もこのままではというのが切実な今、子孫にまで大変な問題のツケを残していくというのは、あまりに身勝手ではないでしょうかね

☆もちろん家や地域によっては、ちゃんとしているところはまだまだあります。
ただ、そういう所でもネットなどの影響で若者がどんどん変わってしまっているという事実もあります。
本当は逆に人間らしい幸せな生活のお手本となりつづけてほしいのですけどね。


11日は上原輝男先生の没後28年の命日。
もうそんなにたつんだな・・・と思うと同時に、平成2年の時点で先生が懸念していた方向にどんどん加速しているということに、申し訳なさもかんじているんですよね・・・