電話を切ってから４０分ぐらい経った頃、モリーが到着した。
案の定、シーに向かう車内では、こだわりの話になったそうだ。
そんな中、モリーが「オヤッさん、結婚してからは、こだわりを捨ててはいないけど、内装は大人しくなっちゃいましたよ」
と言うと男は「そうなんですか」
と一言、言った後、寂しそうな表情で黙ってしまったそうだ。
「いらっしゃい」
オヤジの掛け声を無視してモリーが連れて来た客人は店内を見回している。
「モリー忙しいとこ悪かったな」
「どう致しまして」
モリーは嫌み１つ言わずにオヤジに笑顔を返した。
「あっ、そうだ。モリー、リンちゃんのＤＶＤは？」
「これから買いに行くとこだよ」
「なんだよ、これからかよ。上映会楽しみにしてたのによ」
「ボンちゃん、見たいなら自分で買いなよ」
「ケチくせえな」
客人がこのボンとモリーの遣り取りに割って入ってきた。
「お久しぶりです。ノブさん」
その客人の声にオヤジの顔が強張った。