仮面執事と銀のギター(今は赤だけど…orz) -2ページ目

300円の曇天

うす曇りの空に
大角を振りあげて
固い木の幹に
打ちつけて

自己嫌悪とか
変えられないもどかしさとか
思い出したくもない過去とか
色々な恨みつらみが
消えてなくなればいいが

そうシンプルにはいかない訳で
角が傷ついて痛いだけで

不意に雲の切れ間から
差しこんだ太陽の熱に
少しだけ慰められた気になって

そんな些細なことに
癒しや喜びを感じている自分に
また同じ思考回路に陥って

生まれつき持つ
固いカブトの中に
閉じこもってしまう俺なのに

強そう」とか「カッコイイ」とか
肯定してくれるニンゲンは
疲れ果てたソーシャルワーカーか
腹の底に嘲笑を抱えた
いけ好かない詐欺師に見えて仕方がない。

かといって自暴自棄になって

300円の値札のついた
デパートの虫かごから
2000円の値札のついた
外国産の大きなカブトを横目に

奴隷として主人を待つ生き方を
選択する覚悟すら持てず

また日の光を覆った雲の下
振り下ろす先のない
大角を振り上げて
迷うのだ。

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ジラフキリン

確かにこの長い首のお蔭で
遠くを見渡すことができるし
高いところの草や小鳥を
食べることはできるけど

どんなに首を伸ばしたところで
理想には届かない。

新しい自分になりたい。
新しい場所に行きたい。
新しい恋人がほしい。

一度に10分。一日20回寝るわたしは
20回夢を見る。

生まれた場所のニンゲンがいう
ジラフ」でも
今いる場所のニンゲンがいう
キリン」でもないわたしは
本来のわたしに帰還する。

草原を駆け、
太陽に焼かれ、豪雨に溺れ、
襲いかかるライオンと密漁者の頭を
後ろ足で蹴って粉砕する
そんな毎日。

ここはあまりにも平和すぎて
いつ訪れるか分からない
デストピアへの不安で
誰もが心の闇を抱えていて

全員がライオンが密漁者のように思えて
やられる前にやらなければと
嫌でも警戒してしまうのよ。

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蟻レイバー

睡眠が足りていないのか
毎日毎日
つまらないことばかり
考えてしまっているせいか

よく眠れず頭が痛いし
実のところ疲れきっていて
もう一歩も歩きたくないのだけれど

労働者として生まれた俺は
女王のため、みんなのために
働かなければならない。

自分の何倍もあるミミズの死骸を
俺たちはアゴで挟んで
ずるずるとひきずって歩く。

アゴがもげそうで痛いし
ミミズの野郎は目がないだけまだマシだが
臭いがきつくて吐きそうだ。

兵士として戦って死ぬ自分を想像する。

同じ志を持つ仲間と共に
巨大な敵に立ち向かい、倒す。
戦いの中で俺はくたばるかもしれないが

達成感に包まれた死は
幸福な気がする。

女王と交尾する権利を得る自分を想像する。

その権利を持つ者は
巣の中で最も優れたオスという証明であり
交尾後、食われて死ぬかもしれないが

達成感に包まれた死は
幸福な気がする。

気がするだけで、どちらも実際は
さして幸福じゃないのかも
しれないけれど。

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