仮面執事と銀のギター(今は赤だけど…orz) -3ページ目

シュリンプズドリーム

海の底の砂はあたたかく
干したて布団のよう。

色とりどりの珊瑚は
春の花畑のよう。

海面から差し込む光は
風に揺れるカーテンから漏れる
朝の光のよう。

ゆらゆら漂うプランクトンをぱくり。
母さんが作ってくれた
レモンケーキの味がする。

父さんを追いかけなかった母さんは
お爺ちゃんとお婆ちゃんの世話を
たった一人でこなして
いつもくたびれた顔をしていた。

母さんが運転する車で
月曜から土曜まで、僕は学校へ。
お爺ちゃんとお婆ちゃんは
デイケアへと送ってもらっていた。

あの日、母さんは一言も口を利かず
いつもと違う道を走っていたっけ。

母さん?

いや、エビであるぼくの母さんは
当然のことながらエビ
あんな姿はしていなかった。

ニンゲンの猟師に網ですくわれて
引きちぎられた頭が
船の上から海の底に落ちてきたのだ。

あの夢は、ニンゲンだった夢は、
こんな残酷な世界から逃げ出したいという
ぼくの願望が生み出した
幻なのかもしれない。

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猫が殺した好奇心

その猫なで声は甘く
ぼくの脳髄を溶かして

そのセルリアンブルーの瞳は
ぼくの水晶体を焼いて

そのしなやかな身体に秘められた
湾曲した鋭利な爪は
ぼくの右心房を刺し貫いた。

あふれだす生温かい血流は
真っ白なお花畑を真っ赤に染め

きみは河川敷の階段に捨てられた
シケモクでも見るかのような態度で
ぼくを見下ろす。

息絶えようとしているぼくの脳裏に
とうの昔に忘れていた幼少からの記憶が
流れ始める。

そして思い知る。

ぼくはきみとは不釣り合いにも程がある
生き方しかしてこなかったことを。

その事実から目をそらして
自分を高める努力もなしに
きみを求めていたことを。

きみはブロック塀から飛び降り
ぼくの上に着地して
口から寄生虫を吐き出した。

うねうねとうごめくそれは
ぼくの傷口に集まり
雑菌を食べてくれた。

一方的な愛情を押し付けたぼくに
きみが見せてくれた最後の優しさに
ぼくは謝罪も感謝も告げられず
ただただ涙を流した。

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たかが千円。されど千円。ありがたし。

先日初めて投稿した

ストリエの短編

鍛冶屋のグリジャン」が

入選枠の8作品のうちの一つに

選ばれる運びとなりました。

 

https://storie.jp/event/tensei

 

賞金千円のささやかな受賞ですが

少しでも評価されたことが嬉しいです。

 

書くきっかけになった

天国の松野莉奈さん。

 

読んでくれた皆様と

選んでくれた審査員の皆様

ありがとうございました感謝