ルノアール日録 -9ページ目

2008/11/25

森下から都営大江戸線で牛込神楽坂へ。theatre iwatoで「城山羊の会」の『新しい歌』を観劇。

どこかの地方都市に流れ着いたインチキ臭い女性“歌手”と男性“マネージャー”、及びその都市にある工場の閉鎖に直面する従業員男女、それぞれの人間模様を描いたものだが、どうしてこんなに面白いのか!?ってぐらいにいつの間にか引き込まれ、終盤には、この人間たちをもっと観ていたい、終わって欲しくない…と願っているまでに魅了されてしまった。

一見どこにでもいそうな平凡な人々のエキセントリックさ、欲望のすれ違い、凶暴さ、マヌケさ、そしてせつなさなどなどを、さりげなくコミカルに、鮮やかに描出。

脚本も巧みだが、俳優それぞれの人物造型も的確。特に“小さい店”「黒いワシ」店長役の三浦俊輔の演技がとにかく面白い。マネージャー役・岩谷健司の存在感も強力。ミドリ役の石橋けいの小悪魔的佇まいに惚れる。

水!

都営地下鉄森下駅の近くにあるベニサン・ピット(間もなく取り壊しになるという、老舗の小劇場。ギリギリ間に合った…筆者が訪れるのは最初で最後か)で、「劇団桟敷童子」の『黄金の猿』を観劇。

昨日の「五反田団」とは打って変わって、徹底的に作り込まれたセット/舞台美術(板そのものもめくれ上がる…その効果はいまいち?だったが)、水を大胆かつふんだんに使った演出(序盤から水が舞台前面で噴出しまくり。これが最も印象強く、「水族館劇場」のそれを連想)、劇中歌の挿入など、言わば伝統的なアングラ手法を愚直に貫き、主題の重厚さ(差別-被差別、支配-被支配、人間としての尊厳、など)も含めてその心意気や良し!と大いに買いたいところなのだが、

反面、物語そのものが、肝心なところでいまいち盛り上がりに欠けたキライがあった…助走するだけしといて、主要登場人物がクライマックスで割と呆気なく死んだり、やや取って付けたようなラストシーンなど…。

随所に今風の(とはいえ、ズレあり)コミカルなやりとりを無理矢理挿入するのも(「このバカチンがぁ」「ザンネン!」などの台詞や、「このオレに勝てるかな?」のリピートなど)、その劇世界にそぐわず、興醒めで逆

最小限で最大限

五反田に行き、アトリエヘリコプターで「五反田団」の『すてるたび』(作・演出・出演/前田司郎 出演/黒田大輔 安藤聖 後藤飛鳥)を観劇。

「五反田団」を観るのは今回で3回目だが、今までで一番良かったと思う。きっちり語りきっていた印象。

稽古場そのままの舞台に於いて、椅子4脚と3枚のタオルのみ、という、これ以上ないぐらい簡素で最小限の小道具を縦横無尽に使うこと、加えて4人の出演者の的確な演技…特に作者自身を代弁する人物・次男(幼児退行気味?)を演じた黒田大輔の表情・身体のあらん限りの使いっぷりは圧巻…によって、つげ義春の夢モノ劇画を想起させる夢幻的な内的世界を、最大限に現出させていた。やりようによっていくらでも広がっていく演劇世界の醍醐味、のようなものを堪能させて貰った感あり。

因みに客入れ時のBGMは、はちみつぱいの『センチメンタル通り』、筆者の好きなアルバム。そういえば、黒田大輔の所属するTHE SHAMPOO HATの前回公演では、はっぴいえんどの『風街ろまん』が使われてたなぁ。