「肺炎」

鼻水も出づるし咳も熱もありもしや莫迦しかひかぬ夏風邪

家にある感冒薬も解熱剤も効果無きまま三日い寝たる

聴き慣れぬ楽器をいろいろ持ち寄りて小鬼が鳴らすわが胸の内

ヘルパーさんにお絞り作りて貰ひしを冷蔵庫に置き熱に備ふる

床に居ても胸の辺りゆゼルルルル獣めきたる息の音する

苦しきを押して医師がり訪ぬれば症状脱せむ手立てやあるべき

聴診器わが胸に当て少し置き医師は言ひたりレントゲン撮ります


近所に畑が減っていく。「土」をテーマにしたうちの一首


駐車場になるを免れ葱畑坊主頭の二つ三つ揺れ

随分と更新を怠けてしまった、大晦日以降に詠んだ歌。


思ひつる人の香のする巾着で口を覆ひて咽ぶ大歳


巾着は煙草入れにや使ひたる禁煙したりし思ふ人の香


呑まずとも時は過ぎつる師走尽新しき年否応も無く


広葉樹のもみぢもとうに白茶けて灰色に沈む武蔵野の冬


狂ひ咲く菜の花色づく畑越しに灰褐色の林の見ゆる

今日はこんな歌を読んだ。


塀の上一本道の緊張に子連れの茶虎にシャム猫譲る

寒くなる前に詠んだ短歌:うぐいす色のめじろが好きだ


逆さまの危ふき姿勢の痩せめじろ紅き椿に顔差し入れて


嘴に花粉を付けて若めじろ満足さうに梅の木へ翔ぶ


からうじて枝に繋がる椿花に軽々と乗り蜜吸ふめじろ